ドクターズボイス

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犬の前十字靭帯損傷

前十字靭帯断裂について

犬においての前十字靭帯の損傷は、小型犬から大型犬まですべてのサイズの犬で見られ後肢跛行の原因として多く見られます。損傷のきっかけは、人と同じように運動中の怪我であると考えられていますが、近年ではその原因が靭帯自体の問題もあることがわかってきました。しかし未だ詳しいことはわかりません。また、臨床症状も様々で複雑な場合が多く、時には確定診断が非常に困難な場合が有ります。

犬の前十字靭帯損傷の特徴

1)片側の前十字靭帯を痛めた犬は、その多くが、反対側の足の前十字靭帯も損傷します。

2)十字靭帯損傷は、1〜2歳の若い時から損傷を起こしはじめることもあります。

3)靭帯の損傷は人の場合同様一回の怪我で損傷することもあれば、靭帯の部分的な損傷を繰り返しながら完全な損傷に至る場合もあります。 この場合、症状もわずかに足をかばって歩くぐらいで、ある程度すると見掛け上は普通に歩いているように見られます。

このような事から、後肢の跛行が見られた場合、十字靭帯損傷を注意深く検査する必要があると考えています。

診断

跛行の程度はさまざまで、全然使わない状態からわずかにかばう程度まであります。一般的には、視診・触診とレントゲン検査を行うことである程度の診断は可能ですが、確定診断には、関節鏡検査が行われています。

関節鏡検査

麻酔下で膝関節に小さな穴をあけて、関節内にカメラをいれて直接靭帯を確認する方法です。病変部を拡大して検査できることから、わずかな損傷を見つけることができる他に、前十字靭帯損傷に多く伴う半月板損傷の検査や治療を同時に行うことができます。本院では、関節鏡検査で診断をすると同時に治療もすることになります。

前十字靭帯と後十字靭帯

左肢

前十字靭帯の損傷の診断

関節鏡検査

完全断裂と部分断裂

触診 関節の不安定の評価

ドロアーサイン(脛骨前方引き出し試験)
前十字靭帯が、完全に切れると膝関節の前後方向の安定が失われる。

姿勢の評価

Sit test(お座り検査)
膝を曲げて座ることを嫌うようになる。

レントゲン検査

前十字靭帯が損傷することにより、関節の炎症が見られた場合、レントゲン写真上でその変化を判断する方法。

長期にわたる前十字靭帯損傷の結果により関節が変形している。(右写真)

前十字靭帯損傷の治療法

様々な治療法がありますが、近頃では犬の大きさ・犬種や前十字靭帯の損傷の程度によってその手術方法も選択されています。

関節外縫合術

人工素材の縫合糸を靭帯の代用として、関節の外に設置する方法。
近年では、様々な素材や仕組みの縫合糸が使えるようになりました。

関節角度変更による整復術

骨の角度を変えることで、前十字靭帯がなくても使えるようにする方法
関節面の角度を変える方法(TPLO)と、お皿(膝蓋骨)の靭帯の角度を変える方法(TTA)の2つがあり、状態により使い分ける。

関節外縫合術

タイト・ロープ法

関節角度変更による治療(TPLO,TTA)

脛骨の関節面の角度の変更(TPLO)

脛骨の靭帯付着部(脛骨粗面)の角度の変更(TTA)

TPLO

TTA

以上

前十字靭帯損傷