ドクターズボイス

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肘関節の病気

Q:肘関節の病気についてお聞きします。

まず、中大型犬の関節の病気として股関節形成不全症や前十字靭帯断裂症などがよく知られています。
そして、その治療は様々な方法が用いられ、現在では安定した結果が得られるようになってきています。
一方で、今回話題にする前肢の病気に対する治療は、最近になってようやく研究の成果が出始めてきたところだと言えます。

Q:どのような症状や特徴を持っているのでしょうか?

肘関節の病気は、様々な原因でその病気は始まり、様々な程度の症状を起こしますが、最終的には、全ての肘関節の病気は、関節が変形してくる変形性関節症になってしまい、持続的な歩行困難や痛みを示すようになります。
この変形性関節症は、あらゆる関節で起こり得ます。
また、犬肘関節の変形性関節症の症状は、人の膝関節の病気の状態に似ていて、継続する関節炎により関節表面の軟骨がすり減って行き、その結果関節の変形が起こり、関節面の永久的な欠損、持続的な痛みを伴うことで歩行に支障をきたす厄介な病気です。

Q:どのような犬種に起こる病気なのですか?

この病気は、バーニーズ・マウンテンドッグ、ゴールデン・レトリバー、ニューファンドランドやピレネーなどの大型犬で起こる事がよく知れていますが、実際にはコッカースパニエルや柴犬などの中型犬やさまざまな小型犬、トイ犬種などでも起こっています。
この中で最も深刻な問題を起こす犬種として世界中で認識されているのがラブラドール・レトリバーです。

Q:この犬種(ラブラドール・レトリバー)で問題がとりただされているのはなぜでしょうか?

はっきりとした理由はわかっていませんが、理由の1つとしてラブラドールは他の犬と比べて感情表現としてジャンプをよくする犬である事がひとつの原因と考えています。
その行動による弊害はジャンピングダウンシンドロームと海外では呼ばれています。
そもそも犬は4本足で歩いていますが、その体重配分はだいたい健康な犬で前足6割、後ろ足4割と言われています。
つまり、前足が後ろ足に比べて重要な役割を担っているのです。
ラブラドールを含むレトリバー種でよく知られている股関節形成不全症はその原因が後ろ足の為、多くはかなり悪くなってからでないと症状が出ない場合があります。
それと比べて肘関節の病気の場合、前足が原因なので症状が出やすい為、人がその異常に気づきやすく犬にとっても早期から深刻な問題になるようです。

Q:ではどのように治療または予防して行けばいいのでしょうか?

やはり、体重のコントロールは重要です。
前肢の体重負担を軽減する為のダイエットは必須な方法であると考えます。
また、多くの肘関節の病気は、成長期における関節の形成不全(関節面の不一致)が、その発端であると考えられています。
ですので、しっかりとした関節にする為、成長期にその成長率を少しでも長くなるよう、過剰な食事摂取を避けるようこころがけることが望ましいでしょう。
成長期に出来る限りジャンプを制限する事もそれなりの効果が期待出来るのではないのでしょうか。
また、変形性関節症の初期であれば内科的な方法やリハビリテーションにより関節の動きを安定させる事がその助けになることもあるでしょう。

Q:外科的な対応は、どのような方法があるのでしょうか?

従来、若い成長期においてのみ効果的な方法としての手術はあったのですが、関節症が進行して関節軟骨が欠損してしまった変形性関節症の場合、その治療には限界がありました。
しかし、現在の獣医医療において、徐々に新しい外科的治療方法が行われ始めています。
その方法は、人の膝関節で行われている手術に類似するところが多い方法で、具体的には、体重を乗せる関節面を手術で移動すると言うものです。
自分の正常な関節軟骨を利用し、正常な暮らしが出来るように試みる手術法(SHO手術、PAUL手術)や、関節軟骨がすり減った部分だけをインプラントで置換する方法(CUE手術)などが行われ始めています。

長年この病気は、難治性で、その治療方法がありませんでした。
しかし、このように、徐々にではありますが、その治療の選択肢も増え、ある程度の治療効果が得られています。
この病状をよく理解し、早くからその症状に合わせた的確な対応をする事で、年齢を負っても快適な散歩を楽しませ続けられるようになる。
このことは、たいへん喜ばしい事だと言えるでしょう。