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鎌倉衛生時報での執筆です!

犬の膝の病気

 

犬の膝の病気に、膝蓋骨脱臼という膝のお皿が外れる病気があります。これは、犬すべてで見られますが、特に小型犬で多く見られます。
人の膝蓋骨脱臼は強く足を捻ったりした怪我の結果として起こり急性で強い痛みを伴いますが、犬の場合、成長時期の形成不全が原因とされ、人より多く見られる一方で症状もはっきりとしてないことも多いようです。
小型犬においては、成長期に様々な理由でお皿が膝に安定しなくなりその結果、徐々に脱臼が習慣化していきます。このことが膝蓋骨脱臼の始まりです。
幼若時から繰り返し脱臼を起こしている為、犬自身はその現象に慣れて、徐々に工夫して歩くようになります。歩き方もスキップをするような仕草や時折歩きづらいくらいで、明らかな症状は、ほとんどが気づかないでいることが多いようです。
でははっきりとした症状はないのでそのままでもいいのでしょうか?
これは獣医医療において長く話し合われたテーマでありましたが、近頃は、そのままにしておくことにより、様々な問題が出てくることが懸念されています。
まず、成長期に起こるお皿の脱臼は、その後成長期が終わっても継続していきます。その為長期的に無意識な脱臼を繰り返すことによる変形性関節炎への進行や足の形が変形するなど様々な弊害がゆっくりと進行します。
その進行は非常にゆっくりで特に犬が若い時は、筋力もしっかりとしている為補われ、一見平気なように見えています。
そのため、膝蓋骨脱臼による症状が明らかになり治療を考え始めるのは、続発する新たな問題が膝関節やその他の関節に見つかった時や、歩くことが少しずつ不自由になる高齢犬になってからで、結果的には治療もより難しくなります。
ではどの時期に治療することが今は良いとされているのでしょうか?
2011年にフランスのリオンで行われた世界整形外科学会(WVOC)において、膝蓋骨セミナーが開催され、世界中の獣医整形外科医が集まって様々なことについての一定基準や治療方法について話し合い共通見解を作りました。
その中で、治療の方針として膝蓋骨脱臼の程度を4段階(グレード)に分け、それぞれにおいて治療方法が示されました。
最も脱臼の軽いグレード1に対しては、積極的にリハビリテーションを含む内科的な対応と体重管理などでその後の進行を防御することが推奨されています。
グレード2以上に対しては、手術による安定を行うことが推奨されています。このグレードを診る検査は、動物病院で簡単に受けられるので、行かれた際に一度調べてもらうといいでしょう。
このように小型犬における膝の病気の代表的な膝蓋骨脱臼の治療は症状がはっきりとしないが確実に進行していく為、積極的な検査と計画的な治療を行うことが必要で高齢まで元気に歩ける生活を守る目的があります。

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