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獣医師ブログPart:6 副腎腫瘍と手術症例について

 

こんにちは。獣医師の野村です。

今回は比較的元気でも悪性の可能性もある副腎腫瘍についてお話します。

始めに副腎は左右の腎臓の近くにある臓器で、様々なホルモン(ステロイドやカテコラミンなど)を産生しています。これらのホルモンのバランスが崩れることにより、主に多飲多尿・パンティング・腹部膨満・痒みのない脱毛・高血圧などが見られます。

血液検査ではALTALPといった肝疾患の項目が上昇するので、他に超音波検査や内分泌検査が必要になります。

通常、副腎疾患(クッシング症候群と言われるホルモン疾患)の多くは左右両方が大きくなるのですが、副腎腫瘍の場合左右のどちらかが大きくなります。良性(過形成/腺腫)と悪性(腺癌/褐色細胞腫)の割合は半々ですが直径2cm以上のものは悪性腫瘍の可能性が高くなります。内科的治療は症状は抑えることは出来ても腫瘍増大・浸潤・転移による悪化は防ぐことは出来ないので根本的治療は外科切除です。しかし、副腎腫瘍は解剖学的に大血管(後大静脈と腹大動脈)に近いことや後大静脈に腫瘍栓を形成することがあり、その手術は技術的に難易度が高く、さらに腫瘍の種類によって麻酔管理が異なり周術期死亡率は20%前後とされ忌避される傾向があります。

10月に脳炎で抗がん剤の治療中に偶発的に副腎腫瘍が見つかり、手術を行った症例を紹介したいと思います。

症例:10歳のウェスティー去勢雄

既往歴:2年前に立てなくなり、MRI検査により肉芽腫性髄膜脳炎(GME)と診断し抗がん剤とステロイドにより継続治療中

一般状態:特に体調に問題はない

血液検査:ALPの上昇(*ステロイドの副作用でも上昇する) 内分泌検査:コルチゾール(ステロイド)の上昇

腹部超音波検査:右副腎25.9mm・左副腎13.8mm(正常5mm以下)

        右副腎は後大静脈に巻き込んでいる可能性あり

副腎腫瘍の可能性が高いため、手術適応かCT検査を行うことになりました

右の副腎が大きくなり肝臓と接していて、後大静脈に入り込んでるのが分かります。

その他明らかに転移している所見はなく、このまま放置しておくと破裂して出血死する可能性が予想されたため手術することになりました。

手術までは副腎腫瘍から産生されるステロイドを抑える薬と血栓症予防の薬を飲んでもらい、大学から腫瘍外科専門医の力もおかりして手術させて頂きました。大変な手術でしたが血管の中に入り込んだ腫瘍も取り除くことに成功しました。病理組織検査の結果、褐色細胞腫(副腎髄質腫瘍)という悪性の腫瘍でしたが、術後2ヶ月が経過し体調も特に問題はなく転移の所見も見られていません。今後も当院で脳炎の治療と共に経過を診ていく予定です。

このように特に体調が問題なくても腫瘍が見つかることは少なくなく、症状が出た時には手遅れのことが多いので78歳を越えたら定期的なエコー検査をお勧めします。

獣医師 野村

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