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専門医療 犬猫股関節形成不全症について (Hip Dysplasia)

股関節形成不全症は、成長期における発育不良によるものですが、遺伝等の素因も認められています。しかしながらその原因はまだはっきりとは全て解明していません。全ての動物で見られ、大型犬のみではなく、小型犬、時には猫においても発症しています。

若い時は、関節の不安定症のみで痛みを示さないこともある。

股関節形成不全症によって関節が不安定になります。遊んでいる時や散歩中、なんとなく不安定な歩き方や動き方になりますが、その多くは痛みを示すことなく、痛みが出たとしても一時期だけで、その後見かけ的には治ったように見受けられます。

日々の運動量にもよりますが、多くは8歳以降で症状が見られてくることが多いいようです。しかし、早い子で4歳頃から変形性関節症により症状が明らかになる場合もあります。

 股関節形成不全症による不安定な関節での生活は、その後、関節面にある関節軟骨の早期の欠損になります。つまり動くことにより正常な関節と比べ関節軟骨の浪費がおこり、最終的には関節面に関節軟骨がなくなり、関節がスムーズに動かなくなります。
この事により関節は、損傷しやすく、変形を伴う関節炎(変形性関節症)をおこし、様々な症状を示します。
主に痛み、運動量の低下、よく座る、飛び乗るのが下手になったなどの症状で来院される方が多いいです。散歩中、後ろからトボトボついてくるような散歩をする犬も要注意ですが、鳴くなどのいわゆるはっきりとした異常を示さないのもその特徴です。
これらの症状は、痛み止めなどを処方して一過性に症状を緩和するよう努めますが、残念ながらその効果は一時的で、進行する関節炎に伴って徐々に効果は期待できなくなります。

検査

2歳以降になれば、その多くは一般的なレントゲン検査で診断することも可能になり比較的容易に分かります。近年では、より早期に診断し治療できる機会を得るために6ヶ月齢頃からその診察が始まっています。

本院では、4ヶ月齢からの肘・股関節の早期健康診断を実施しています。

関節の緩さの程度を知る検査

健康診断で関節の不安定が疑われた場合本院では
pen-hip法 (ペンシルバニア大学で考案された方法)を検査として勧めています。
麻酔下で、股関節に特殊な器具を使って、関節の緩さを偏差値として数字化し、将来股関節の関節炎の発生する可能性を推測する方法です。

 

7ヶ月齢のゴールデンレトリバー(上、下)

 上の写真では見かけ的に股関節にしっかり収まっているようであるが、下の写真で、特殊な器具を使うと左右とも関節から大きく外れてしまうのが確認できる。関節の緩さを認める。 将来股関節形成不全症による変形性関節症を発症する可能性が非常に高い事が推測できます。

 

治療

内科的治療と外科的治療が有ります。

内科的治療

大型犬、小型犬問わず、股関節形成不全症が軽度の場合、体重管理や適度な運動を中心にできるだけ関節の動きを維持するように対応し、関節をいたわりつつ対応する事が大切です。
計画的な運動と関節の保護を目的にした理学療法(リハビリテーション)としての水中運動も効果的な治療方法です。

外科治療

犬猫のサイズと時期によって様々な外科治療方法がありますが、大きく分けて2グループに分けて対応しています。検査方法の発達により、より早期に確定診断をし、症状が発現する前に早期対応することができるようになったためです。

グループ1(5ヶ月齢〜8ヶ月齢)

成長期(約8ヶ月頃まで)中で、将来的に股関節形成不全症による関節炎が進行すると推測された場合

犬は、まだ股関節の形成期であるため、犬のその後の成長を利用して股関節を正常に近い形に成長させる方法があります。

5ヶ月齢まで  恥骨結合閉鎖術
この方法は、骨を切ったりしないので比較的簡単な方法で対応しやすいのですが、その効果がまちまちであること、また、年齢がより若い方が効果的である(5ヶ月齢以内)ことから、ほとんど症状が見られない若い年齢のうちに治療できるかどうかが大切です。

5ヶ月齢〜8ヶ月齢まで              

二点骨きり術、三点骨きり術

股関節の緩さの程度を検査して、潜在的な股関節形成不全症を評価した後、骨を切って股関節の関節の角度を変えて、股関節の入り具合を深くする手術です。まだ痛みを示すような症状も見られない時期に対応できれば、非常に効果的で一生涯において改善する子も多いです。ただこの手術も効果的な結果を得るためには年齢的な制限があり、今現在では8ヶ月齢以内での対応が望ましいと考えられています。より新しい方法として、2点骨きり術が行われ、3点骨きり術に比べ、様々なことが改善されていますが、同時により若い年齢での対応が必要となっています。

いずれにしても、若いうちに股関節形成不全症に対する対策は、症状の見られる前に行う事が大切でそのためには飼い主、担当される病院の先生の病気に対する理解が必要になります。

1歳のラブラドール 

左、右とそれぞれ6ヶ月齢と7ヶ月齢にDPO手術をうけて、両股関節ともきっちりと関節が収まっているのがわかる。

 

動画 8ヶ月齢ゴールデンレトリバー 右 術後1ヶ月半、左 術後3週間  術後直後の特徴的な歩き方ではあるが、早い段階から歩くことが可能である。

グループ2(1歳以上)

成長期後期以降(約1歳以上)は、今まで述べてきたような予防的な手術の効果はあまり期待できなく、症状の有無によって積極的な外科治療を行うかどうか個々の状態を診察しながら治療方法を選択する事になります。

保存療法
症状が見られないかまたは、軽度の場合などは、体重管理を含む変形性関節症の症状の発現を遅らせる方法を中心に治療していきます。これらに対しては、レーザーなどのリハビリを中心に関節のケアーが重要です。


症状がある場合、対症療法としてリハビリや痛み止めの内服処方などの内科治療を行いつつ、根治治療としては外科治療を考える必要があります。

外科治療

外科治療は一般的には、2つの方法が行われます。
大腿骨頭切除術(FHO)
人工関節による股関節全置換術(THR)

大腿骨頭切除術(FHO)

大型犬、小型犬、猫何れにも対応できる手術法です。関節の連結部分を取り除くことによって、変形性関節症によって常に擦れている関節部の接触がなくなり痛みを軽減する事ができます。4つ足動物に対して行う特徴的な手術方法として古くから行われています。           痛みはなくなりますが術後経過は様々です。一定の回復は見られる中、歩く場合などやや跛行が残ってしまうこともあります。この手術の場合術後は関節の動く範囲は小さくなり、関節周りの筋量は回復しないので、できるだけ早い段階から積極的なリハビリを行う事が必要です。
 この手術方法は小型犬や猫においては、比較的許容できると考えられていますが、大型犬においては、あくまで、痛みをなくす目的として選択される治療法です。

 プードル 2歳 

骨頭壊死症に対して、大腿骨頭切除術を実施。その後3ヶ月間のリハビリを実施し、お散歩などの日常生活は不自由なく暮らせています。

人工関節による股関節全置換術(THR)

4歳 ボーダーコリー

両側の股関節全置換時術。術後3ヶ月で普段の運動へ復帰している。

その多くは大型犬を対象に研究され、治療に用いられています。
本院では、約18年前から大型犬の股関節形成不全症に対してその治療として人工関節の手術を提供してきています。
治療経過は、素晴らしく、術後3ヶ月以降には、普通に散歩したり遊んだり、特別運動の制約はいらなくなります。手術後のリハビリも特に必要ありません。
治療によって痛みと機能双方の改善が得られるすばらしい治療方法である一方で、術後直後は、再脱臼などの合併症も起こし得ることがあり、その対応も含め、慎重に手術を決断・遂行して行くことが大切です。
近年においては、小型犬・中型犬や猫においての人工関節も研究され、実際に治療に用いられています。

 

(動画)両後肢 チューリッヒセメントレス法による股関節全置換手術を受けて3年目。日々の運動を楽しんでいる様子を飼い主様のご好意で送っていただけました。

(動画)股関節形成不全症のニューファンドランド1歳。左足股関節全置換手術後1ヶ月半。

(動画)右股関節レッグペルテス病に対する人工関節手術後4年。

症例1 バーニーズマウンテンドッグ 2歳。両側股関節形成不全症による治療で紹介していただきました。左股関節は、人工関節手術(THR)を行い、3ヶ月間隔を持って右股関節全置換手術。術前の歩行検査。(動画下)

(動画下)術後1ヶ月。リードでのお散歩はさせてあげられるようになります。

 

(動画下)術後3ヶ月。ここから、運動制限も徐々に解除し、普段どうり遊んでもらえるようになります。(左後肢術後6ヶ月、右後肢術後3ヶ月)

 

(動画下)術後 左1年3ヶ月、右1年。運動制限もなく生活を送っています。

治療実績については、本院から学会で報告させていただいています。

獣医麻酔外科学会
(犬股関節形成不全への股関節全置換術Zurich Cementless41症例の長期成績)

動物臨床医学会
(犬股関節全置換術チューリッヒセメントレスの術後合併症とその対応)

獣医麻酔外科学会
(犬股関節内骨折に対し、人工関節全置換術チューリッヒセメントレスを実施
 した症例)

神奈川県獣医師会発表会
(犬股関節全置換術Zurich Cementless を行った治療成績)

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